ご期待にお応えしてQSITのページを作りました (^_-)-☆

by 中村宗弘 of カネカ 

QSITについて

1.背景
米国FDAが医療機器GMPをISO9001/EN46001の品質システムにあわせて医療機器QSR(Quality System Regulation)に改訂したときにその始まりがあります。すなわち、医療機器の品質保証の基準を製造管理と品質管理のGMPから製品の設計/製造/試験/据付/付帯サービスという製品の全ライフサイクルを対象とした品質システムに変え、QSRとしました。また一方で、FDA近代化法の成立により、FDAはその業務をリストラすることが求められました。

QSIT以前のFDAの査察はボトムアップ監査と言われ、個々の事象からスタートする査察でした。例えば、苦情ファイルの一つの事象からスタートし、原因調査が正しく行われ、それに対するアクションが行われ、その結果として変更管理やそれに伴う文書管理が正しく行われているかという監査でした。
米国医療機器GMPがQSRに改訂され、品質システムに注目した監査に移行されました。
典型的なのは、FDA483という、監査指摘事項(観察事項)を記載した監査終了時に手渡されるフォームです。QSRに移行した後FDA483にはその一番最初に必ず次の文言が記載されるようになったのです。
「この FORM FDA-483 に記載された所見は、好ましくない状況を網羅し
たものではない。法に従って、品質システムの要求事項に対する全ての違反を識別して是正するために、あなたの企業は内部自己監査を行う責任がある。」

すなわち、各企業の自己責任を強く要請する姿勢に転じたわけです
これには、上に述べたFDA近代化法の影響も強くあると思います。

2.GMPとQMS
QMSっていうと、GMPの親戚みたいに思われるかもしれませんが、GMPを適用する医薬品とQMSを適用する医療機器との間には大きな差があります。
医薬品の場合、いってみれば、化学物質なので、開発段階にその組成が決定されその効能効果用量が決定されるので、市販段階では開発段階で規定されたことを厳密に遵守することが非常に大事です。それがGMPだと私は思います。
一方、医療機器の場合、開発段階で意図された使用法等とは関係なしにお医者様は勝手な使い方をすることもあるのです。思ってもいないことがおきるのですね。私もそういうことでは痛い目?にあっています。そういうことが起きたとき、私たち供給者はそれに対応する必要があります。お医者様にそんなことしてもらっては困ります というだけではすまないわけです。 彼らはメチャなことを平気でしてくれるんです。
というわけで、市販後の情報を製品に反映し、改善していく必要があるのです。このためには、単に製造や品質管理だけをしっかりと管理して、「正しいものを」製造して供給するだけではだめなので、市場経験を反映させて製品を改善していく必要があるわけです。それがQMSというわけです。
(苦言を申せば、一変等の規制が欧州と比べて非常にきついのでなかなか改善ができないのですが)

 参考 品質保証とQMSの歴史

3.QSITとは
QSITはQS(品質システム)の査察のためのFDAのまあいえば査察官マニュアルです。QSはそれ以降QMS(品質マネージメントシステム)と進化していますが、基本は同じで現在でも通用する概念です。FDA近代化法により、FDAも効率的な業務運営を要求され、査察を合理的に実施するため、またQSRの施行に伴い、これにあわせた査察技術を開発したと言えます。
QSITができる前は、FDAの査察官の間にもかなりひどいレベル差があり、明らかに不適合があるのに指摘もせずに帰ってしまう査察も見受けられました。
一方、当社にはQSITを開発した査察官が来たのですが、これはものすごく厳しくかつ、要領を得た査察でした。これらの査察レベルをあわせるためのマニュアルといえるでしょう。

以上の背景の下、また、単なる製造管理や品質管理ではなく、品質保証全体のシステムを査察する技術として開発されたのがQSITです。
QSITの特徴はトップダウン監査といえます。
個々の事象から出発する(ボトムアップ)のではなく、まずシステムはどうなっていますか?というところ(すなわち手順)からスタートして、それを実施している証拠(すなわち記録)に降りていくトップダウン監査です。

またQSITの特徴的なのは、時間配分とかにまで言及されていることです。なんとか効率的かつ均質な査察をしようというFDAの意気込みが感じられます。

4.QSITの特徴
QSITは4つのサブシステムに注目してこれを査察することとしています
4つのサブシステムとは、CAPA(是正処置/予防処置)、経営管理、製造管理、設計管理です。
もちろん、QMSはその他のシステムにより構成されていますが、この4つのサブシステムを見れば全てのことが分かっちゃうということですね。
QMSでは当然文書管理とか記録管理とか言うのは重要な要素ですが、わざわざそれを見なくても、主要サブシステムを見てる間に分かっちゃうと言うわけです。
そりゃ当然ですね。例えば製造見てれば、手順の文書化とか製造記録も見ちゃうわけですから。
ですから、査察を受ける側にしてみれば主要サブシステムにないからといって、手を抜ける訳ではないわけです
なかなか効率的な監査手法です

5.QMSの要点
インプットは何? アウトプットは何? それがQMSのキーワードだと思います。 上の例で言えば、「何か不都合(不適合)が起きたとき、どのようにしてそれを感知しますか」(そのシステムはできていますか?)=インプット 「その時、どのように対処するか決まっていますか?」=アウトプット。
MS(マネジメントシステム)では、とにかく、インプットは何? アウトプットはどうするの? この2言でほとんどの話がすむと思います。あと、PDCAの、「C=それでうまくいってるか確認してますか?(判断基準は何ですか)」 「A=うまくいってなければ、どうしてますか?」

6.QSITは日本に適用できるか?
当然ながら、QSITは基礎としている規制が米国QSRなので日本のQMS省令とは調和していないのでそのままでは使えません。
しかしながら、QSITがテクニックであるので、技術としては、要求事項の差を理解した上でなら素晴らしい?監査手法ではないかと思います。

7.各国QMS調和状況について
GHTF活動を通じて日米欧豪のQMS規制の調和は随分進んでいます。
GHTFの理解は、日欧豪加は調和された との結論です。米国は少し違うなっていうところが共通理解と思います(米国は調和していると主張していますが)
とわいえ、QMS省令の元となったISO13485:2003には米国QSRが色濃く反映しており、ほぼ調和しているといえると思います。(特別な要求事項とか表現とかが異なります)

といっても、日本のQMS省令も完全にISO13485:2003を使ってるわけではありません。一部において特別な要求事項が存在しています。例えば、文書の保存期間、製品標準書に対する要求事項等があげられます。

当然ながら、これらの調和がとれていない部分についてはQSITではカバーできないといえるでしょう。また米国QSRでの突出した要求事項もあり、それがQSITに反映されている部分もあるので注意が必要です

QSIT日本語訳(pdfファイル)
 注:本文中のセクション番号は米国QSRのセクション番号です
    米QSRが必要な場合はご連絡ください

GHTF監査戦略によるチェックリスト
 QSITをベースとして作成されたGHTFのQMS査察用質問集
 これはISO13485が対象となってるので、日本でも使えます(QMS省令対照付き)